夜明けの少し前に

第四章 月食





或る夜。

満つ夜空の主、闇に喰はる。



其の時来たるを、誰一人知る者ぞいなくば、

人々惑いにけり。



王の一の子が死し夜に、

失はれし光を思ふ故か、

花、其の夜を嘆かむと咲き乱りし。



闇の獣、大ひに暴れ、

陽を恐れず。



光は、奪はれつ。