竜の眠り




“竜の眠りを、何としても妨げよ!!”



 ある国に、一匹の竜がいた。
 地下深くにある石で出来た大きな部屋に、竜はいた。
 そして、その国にはある伝承があった。



『竜が眠りに就く時、一人の姫が其の夢へと導かれるだろう』



 誰が言ったのかも、遺したのかも知らないその言葉は、
 長らく王家の繁栄にひっそりと影を落としてきた。

 竜が居なければ、彼らはそれを信ずることも無かっただろう。



 そして、“伝承”は今、示された。

 王城の地下―――深い深い場所にある石室で、竜が眠りについた。

 時を同じくして、4人居る王家の子のうち、唯一人の姫がその瞼を閉じる。



 王と王妃とその子等は嘆いた。民も嘆いた。

 あらゆる手を尽くしても、一向に現実に戻らない竜と姫。
 ただただ、安らかな寝息を立ててその不思議な眠りを貪る。





 王が出した勅令に応じて、一人の男が王城にやってきた。

 男は言う。

「私は“夢見”の力を有しております。必ずや、竜の夢から姫を連れ出してご覧に入れましょう」

 “夢見”とは何なのか。どうやって連れ出すというのか。
 だが、嘆くことにも疲れ始めた王と王妃は、その男に総てを託した。

 姫と、竜と、男が共に石室で眠りについた。





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